<大緊急>経済安保法「特定重要技術の基本指針案」に大急ぎでパブコメを送ろう! |
1.パブコメの意義と呼びかけ
2.パブコメの送り方について
3.特定重要技術の基本指針案などについての問題点解説
4.特定重要技術の基本指針案についてのパブコメ文章案
1.【パブコメの意義と呼びかけ】
「軍事研究推進法」であり「現代の国家総動員法」である経済安保法(5月に成立)の基本方針案、特定重要技術についての基本指針案、特定重要物資についての基本指針案の3つがパブリックコメント(7月27日~8月25日)にかけられています。
パブコメ後、9月末までに閣議決定され、年内には5000億円規模の「経済安保基金」を投じる「特定重要技術」(軍事転用技術)の研究公募が行われます。さらに、年明けの通常国会では、機密情報の取り扱いを有資格者のみに認める「セキュリティー・クリアランス」制度を導入する法改悪が目論まれています。
加えて、経済安保大臣に就任した高市早苗議員は6月、テレビで「経済安全保障推進法にスパイ防止法に近い物を入れ込んで行くことが大事だ」と強調しています。
高市早苗「スパイ防止法に近いものが求められる」(6月13日、FNNプライムオンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/596334
このパブコメは、政府に直接意見を訴える場であると同時に、多くの人々に経済安保法の危険な動きを共有できる機会でもあります。「基本方針案」に続き、「特定重要技術についての基本指針案」に対するパブコメを呼びかけます。パブコメを集中し、悪法の暴走を食い止めましょう。
2.【パブコメの送り方について】
<意見募集期間>
7月27日(水)~【8月25日(木)】 ※締切まであと1週間。急いでください!
<パブコメの対象など>
経済安保法パブコメページ
https://bit.ly/3P0HqUN
意見募集要領
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239213
◆特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用に関する基本指針(案)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000239216
<パブコメを送る方法>
◆意見募集フォーム
https://form.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/opinion-0002.html
★【重要】最初に「(3)特定重要技術の基本指針案について」と明記して意見を書いてください。
(特定重要技術の基本指針案の他に2つがパブコメにかかっており、区別を明確にすることが要求されているため)
※文字化けを防ぐため、半角カタカナ、丸数字、特殊文字は使用しないでください。
※1万字以内。何回出しても、短くてもOKです。
※「意見」のみ必須、住所・氏名などは任意です。
◆郵送
〒100-8968 東京都千代田区永田町1-6-1
内閣府大臣官房経済安全保障推進室 宛て
※指定された用紙はありませんが、最初に「(3)特定重要技術の基本指針案について」と明記して意見を書いてください(8月25日までの期間内必着)。
3.【特定重要技術の基本指針案などについての問題点解説】
衆議院の法案審議で参考人を務めた井原聰さん(東北大学名誉教授)が、経済安保法の特定重要技術に関する基本指針案などの問題点について、詳しく解説されています。基本指針案については後半です。ぜひパブコメの参考にしてください!
軍学共同反対連絡会ニュースレターNo.70
http://no-military-research.jp/wp1/wp-content/uploads/2022/08/NL70.pdf
4.ご活用を!【特定重要技術の基本指針案についてのパブコメ文章案】
1)「はじめに」において、「先端的な重要技術」「先端技術」の「研究開発やその成果の活用」が「中・長期的に我が国が国際社会で確固たる地位を確保し続ける上で必要不可欠」と述べていますが、ここで言う先端技術=特定重要技術はAI、量子、極超音速飛行等の新興技術であり、「安全保障上の脅威等への有効な対応策」とは軍事研究に他なりません。印象操作するのでなく、「軍事研究」「軍事技術の研究開発」と表現すべきです。
2)「国際社会において確固たる地位を確保し」「他国に優位する」(P.4)と、ナショナリズムを鼓舞する記述がなされています。ウクライナ問題や米中対立を好機とばかりに、軍拡政策に呼応して、中国やロシア、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)などとの緊張関係を作り出す内容となっており、是正が強く求められます。
3)国会審議で小林担当大臣は「得られた成果が、民間における用途のみならず、防衛省自らの判断によって活用されることはあり得ると考えております」(3月30日、衆院内閣委員会)と述べていましたが、案文には「あり得る」ではなく「国民生活の向上等にとどまらず、世界が直面する様々な課題への積極的な貢献」(P.4)と踏み込んでいます。ここで言う「貢献」とは、気候危機や核兵器禁止等に対してではなく、米国の世界戦略に追随する日本の軍事的貢献が想定されています。このような法律は廃止すべきです。
4)特定重要技術研究開発の重要なポイントは「協議会」を設置しての研究開発にあります。国会審議で小林大臣は「この協議会というかこの枠組みというのは、防衛装備品をはじめとする具体的製品の開発を直接支援するものではないんです。…イメージですけれども、ここの協議会、この官民技術協力の枠組みで対象としようとする研究開発の対象というのは社会実装に至る前までのことでございまして」(3月25日、衆院内閣委員会)と答弁していました。ところが案文では、協議会は「機微な情報の共有にとどまらず、社会実装のイメージや研究開発の進め方を議論・共有する」などとしており、協議会の趣旨に特定重要技術の社会実装を実現することも含まれています。明らかに齟齬があるので、小林担当大臣の説明に合わせるべきです。
5)協議会の組織は、「当該研究開発等を代表する者として相当と認められる者」の同意を得て行われる、としており、「相当と認められる者」が複数存在すると認められる場合は、その全てから同意を得ることが必要」(P.10)としていますが、「相当」とはいかなるものを求めているのか不明で、恣意的な運用に道を開くものです。厳格に規定すべきです。
6)「研究開発大臣による同意の取得は書面で行う」、「研究開発等を代表する者が同意を強制されることはない」、「研究開発のテーマによっては、募集時等に協議会の設置を念頭に置いている旨を明示することも可能」また「協議会の組織に係る同意を採択の条件にすることや、同意しない者を不利に扱ってはならない」(P.10)との記述は、有識者や財界からの提言、国会審議で指摘された協議会の問題点を意識し、研究者の自主性を尊重してはいます。しかし、実際の運用においては、大規模な予算上の優遇、官民協力、機微情報の開示というアメが極めて乏しい大学予算に苦しむ研究者の前にぶら下げられ、そのほっぺたを金でたたいて引き込む仕掛けとなっています。
7)協議会では、機微な情報が開示されるため罰則付きの守秘義務が課せられ、まず安全管理措置(取り扱う区域の管理、機器及び電子媒体等の盗難等の防止、電子媒体等を持ち運ぶ場合の漏えい等の防止、機器・電子媒体等の廃棄など)が厳しく求められます。こうした研究環境は大学や研究機関に監視エリアを作り出します。研究交流や研究発表、論文発表について秘密事項は最小限に留めるとしていますが、担保する仕掛けはありません。実効的歯止めを設けるべきです。
8)研究はとかく計画通りには進まず、横道にそれることが多く、その横道で思わぬ成果が生まれることがあります。協議会に進捗状況を管理されていては、横道に入ることなどは不可能です。企業の商品開発的仕掛けでは、先端的で創造的な研究は生まれないと言えます。
9)協議会の構成員として、具体的には「潜在的な社会実装の担い手として想定される関係行政機関の長又はその職員、研究開発の実施者、連携相手となる研究機関又はその役職員、シンクタンクやその役職員、更には、資金配分機関又はその役職員、その他社会実装に関係する者等が想定される」(P.11)としています。この構成は協議会による社会実装の実現と研究成果の評価までを含むものとなっており、研究者の自由な発想が塞がれてしまうことが危惧されます。
10)協議会への参画や離脱は自由で、離脱しても不利益な扱いは受けないとされ、協議会を離脱しても研究チームに残ることが可能だとしていますが、その際、どのように研究に係わるのかが不明です。明確に示すべきです。
11)軍事研究であることが明確になれば、ユネスコの「科学及び科学研究者に関する勧告」すなわち、「科学技術の発展が人類の福祉、尊厳及び人権を損なう場合又は「軍民両用」に当たる場合には、科学研究者は、良心に従って当該事業から身を引く権利を有し、並びにこれらの懸念について自由に意見を表明し、及び報告する権利及び責任を有する」(第39回ユネスコ総会採択、2017年11月13日)に抵触し、勧告を無視することにもなりかねません。ユネスコ勧告を厳守すると明記すべきです。
12)多くの大学が軍事研究をしないとする理念や倫理綱領を鮮明にしていますが、官民協議会で防衛省や軍需産業側が伴走しているなら、それは軍事研究そのものであり、研究者は大学の理念や倫理綱領との間で、二つに引き裂かれた存在となります。大学の自治、学問の自由の侵害であるばかりか、基本的人権の侵害にもなりかねませんが、政府はこれとどう対処するのか不明です。第90条で国際約束の誠実な履行を「留意しなければならない」としていますが、国際約束はWTOを念頭に置いていると考えられ、ユネスコ勧告等を含むよう範囲を広げることが不可欠です。
13)内閣総理大臣は、各協議会が参考とするためモデルとなる規約を示すこととしています(P.12)。協議会の運営は、当該特定重要技術の ①研究開発に有用な情報の収集、整理及び分析に関する事項 ②研究開発の効果的な促進のための方策に関する事項 ③研究開発の内容及び成果の取扱いに関する事項 ④研究開発に関する情報を適正に管理するために必要な措置に関する事項 ⑤その他、となっています(P.12)。協議会に参画した研究者は研究以外にかくも多くの課題に付き合わされるのでしょうか。協議会での議論は全会一致で進めることになっており、運営上はかかわらざるを得ない仕掛けになっています。
14)「制約的要素は必要最小限度とし、研究成果は公開を基本、論文などの成果発表は、守秘義務の対象となる情報を除き、制約を課さないで原則公開する。研究成果による特許権等の帰属については、日本版バイ・ドール制度の適用を基本。個々の技術について日本版バイ・ドール制度を適用しない場合は協議会で、全ての参加者が納得する形で決定する」(P.14)とあります。あたかも制約は最小限で、原則公開を思わせる記述になっていますが、守秘義務情報はしっかり制約されており、印象操作が著しく誤解を生む可能性があるこうした記述は削除すべきです。
15)特定重要技術は3類型(P.6)のいずれかまたは複数類型にまたがるものと定義され、「外部に不当に利用され」とありますが、「外部」とは何を指すのか、何に対する「外部」なのか全く不明です。厳格に定義すべきです。
16)調査研究を実施する技術領域として20の技術領域がリストアップされましたが、これは「米国重要・新興技術(CET)国家戦略2020」を基礎にしたもので、CETは全米科学技術会議(NSTC)が国家安全保障に関連する活動に反映させるデータとして公表しているものです。アメリカの軍事戦略の一翼を担うことが明確です。自律的な領域選択ではなく、しかも民間のシンクタンクに選択を任せた無責任極まりないリストアップです。根本的な見直しを求めます。
17)「先端技術」という用語は、「安全保障上の脅威等への有効な対応策として、先端技術の研究開発・活用を強力に推進」というように、安全保障上の対応策が念頭に置かれています。にもかかわらず、民用に力点をおいた表現が多く、この法律の真の狙いを隠すものです。本質を正確に記述すべきです。
18)「近年急速に進展しつつあるAI、量子等の新興技術の研究開発は、アカデミアやスタートアップ企業を含めた多様な主体がボトムアップで推進しており、先端技術の研究開発を担う主体に変化が生じている」(P.3)とあります。アカデミアなどからのボトムアップで新興技術が生まれてきているとの認識は大事ですが、極めて乏しい研究費の中で先端技術の種が生まれているのですから、成果を刈り取るだけではなく、ボトムを形成するアカデミアを充実させる政策が不可欠です。この法では成果の刈り取りのために5,000憶円もの基金を投資することになっていますが、これではボトムでの予算はさらに縮小され、研究力はますます低下してしまいます。安易な技術政策は中止すべきです。
19)シンクタンクによる先端技術の研究開発計画は、特定重要技術分野に目配りし、新興技術を目利きしたりするため、研究者の個人情報、研究環境の情報の収集につながるとともに、民間企業の活用あるいは「公的活用」のための社会実装へとつながります。国会審議での「社会実装の手前まで」という小林担当大臣の回答とは異なっています。しかも、情報技術を別にすると、「公」とは防衛省の活用、つまり「防衛装備品」づくりであることが見えてきます。国会審議を逸脱した危険な研究開発計画は中止すべきです。
20)優秀な人材をシンクタンクに集め、創造的研究の政策的リードを図ろうとしていますが、問題解決型技術開発の目利きを期待するシンクタンクからは、防衛分野や政財界が喜ぶ分野の研究の一つ二つは生まれても、創造的な研究の政策的リードは困難です。シンクタンクを、学位を出せる組織にという意見さえありますが、高等教育への介入の危険をもたらします。
21)「国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるもの」の定義がなく、恣意的な運用が可能です。予見可能性がなく、研究者に機微な技術の範囲が明確にならない可能性が高く、論文・口頭発表などに自己規制をかけることにより、研究交流の大きな障害となります。研究は公表され、議論されることで研究成果の質が保障されるものであり、秘密指定に対して、研究・発表の自由が保障される「規制制度」が不可欠と考えます。
22)「秘密」の定義がなく、「秘密」それ自体を秘密にすることもでき、恣意的な秘密指定が可能です。民が官へ忖度したり、癒着したり、従属したり、さらには官の民への天下りによる民の支配を生み出す危険性があります。また恣意的で過剰な取り締まりも危惧されます。
23)秘密指定のある協議会に加わった研究者は、研究発表の自由を奪われます。国会審議では「社会実装の手前まで」と説明しながら、協議会が社会実装を目指すことが明らかになっています。軍事研究にかかわることを拒否して、協議会から離脱できるのか否かも不明です。
24)国家安全保障局と内閣府の経済安全保障推進部局の相互協力が何度もうたわれていますが、国家安全保障局を頂点として、かつての「大本営」のような権力集中機関が形成され、国家総動員体制が作られることを憂慮します。本法を運用するということなら、権力を相互にチェックする仕組み(何らかの規制委員会)を組み込むべきです。
25)「経済安全保障法制に関する有識者会議」の人選の基準を明示すべきです。また、法律に批判的な識者を補充すべきです。
26)「経済安全保障法制に関する有識者会議」の内容について、議事概要ではなく、発言者名を明記した議事録を公開すべきです。
27)「公的分野での活用が一定程度見込まれる段階に至った時点で、当該技術の詳細が公開されることにより公的利用に支障が生じる場合には、例外的ではありますが、協議会で合意された対応方針を踏まえ、一定の情報をノウハウとして管理するなどの適切な対応が求められる」(P.14)とあります。このように、「公的活用」という表現がたびたび出てきますが、研究成果を公的活用するのは、情報関連技術を除くと、ほぼ防衛省ではないかとみられます。「公的分野」などという印象操作につながる表現は撤回すべきです。
28)研究成果の「海外での懸念用途」への軍事転用があり得る場合に、「関係行政機関等から協議会構成員に対し、例外的に、研究成果を非公開として扱うべきとの要請が行われた場合、協議会において規約等に従って全ての参加者が納得する形で、速やかに結論を出すことが期待される。…協議会において結論を出すことができなければ、…成果の公開に制約が課されることはない。また、こうした要請を行った事実自体は秘密には該当しないことから、守秘義務の対象とはならない」(P.15)とあります。全員一致の協議会で結論が出なかった場合は成果の公開に制約がないばかりか、そうした要請自体が秘密にならないというものです。罰則付きの守秘義務のある情報を得ていて、結論が出でなかったから研究成果や非公開の要請の事実は秘密に該当しないとする、という意味が判然としません。
29)特定重要技術の開発支援(今年度はとりあえず5千億円)の投資は、基盤的基礎研究費を圧迫し、予算が回らず、研究の多様性が保証されず、創造的研究を逼塞させる危険性があります。
30)政府の戦略にかなう研究開発の推進は、それ以外の分野の研究予算を減少させ、学術研究体制にゆがみをもたらしかねません。その結果、日本の研究力はますます低下し、世界に遅れをとることにもなりかねません。
31)政府AIによって個人研究者情報が管理統制される恐れがあります。
32)協議会が支援伴走する一気呵成の開発研究による社会実装は、研究者を消耗させることになります。
33)プロジェクトごとに協議会(関係大臣、行政機関の長、研究代表者、シンクタンクで構成)を組織する際には内閣総理大臣と協議することとなっていますが、研究開発推進に有用な情報の共有、社会実装に向けた制度面の協力のためにこのような大げさな組織を設置する理由が不明です。
34)セキュリティ・クリアランス制度の導入は、秘密保護法とあいまって、基本的人権の侵害や監視社会化の加速をもたらすことが危惧されます。導入すべきではありません。
35)特許非公開にかかわる研究発表の差し止めは、技術開発の停滞のみならず、研究交流への規制、研究の自由の侵害、個人情報の収集管理及び統制を引き起こします。発明者の権利がどの程度保障されるのかも不明です。
36)「大川原化工機」の幹部ら3人が、軍事転用可能な噴霧乾燥機を無許可で輸出したとして逮捕・起訴され、その後に起訴が取り消されたという、経済安保法の先取りとも言うべき冤罪事件が起きています。この法律の中では、同様の悲劇を防ぐための実効的対策は講じられていません。抜本的見直しが不可欠です。
37)法の施行状況について、国会や市民への公表はもとより、措置の対象者と政府の双方向のコミュニケーションが対等・平等に行われることが担保できるような評価組織をつくるべきです。
【呼びかけ】
経済安保法に異議ありキャンペーン
デジタル監視社会に反対する法律家ネットワーク
[連絡先]
090-6185-4407(杉原)
03-3341-3133(東京共同法律事務所・海渡)