「自由と生存のメーデー」の報告と私のスピーチ |








デモでは、「一人一月30万円!」「カネは個人に配れ!」「税金返せ!」「自己責任を押し付けるな!」「家賃をただにしろ!」「学費を返せ!」「戦闘機買わずに金よこせ!」「緊急事態宣言反対!」「延長するなら金よこせ!」「コロナ口実改憲反対!」「みんなに検査を受けさせろ!」「DVやめろ!」「オリンピックは中止だ中止! 廃止だ廃止!」「安倍はやめろ!」「麻生もやめろ!」などとコール。
終了後にアルタ前でリレートーク。雨宮処凛さん(作家・活動家)、小倉利丸さん(批評家)、杉原浩司(武器取引反対ネットワーク[NAJAT])、名波ナミさん(アナルカ・フェミニズムグループ 紅一点)、渋谷の路上の自由を守る会などがスピーチ。茨城不安定労組、栗田隆子さんからのメッセージも読み上げられました。その後、サウンドシステムを持ち込んでのFreeRaveも行われました。
◆リレートークのYouTube動画(川島進さん撮影)
https://youtu.be/WiBkatGRy8Y
雨宮処凛、小倉利丸、杉原浩司、名波ナミ、渋谷の路上の自由を守る会など
(杉原は24分10秒~34分34秒)
※以下は私のスピーチ全文です。ぜひご一読ください。
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「自由と生存のメーデー」スピーチ
杉原浩司(武器取引反対ネットワーク[NAJAT]代表)
私たちはこの間、「休業補償なき自粛」を強要されてきました。しかし、安倍政権は自粛などしていません。3月から、政府自民党は、開発してもいない次期戦闘機の海外輸出案の検討を始めました。4月5日には、地元の自粛要請を無視して、宮古島のミサイル部隊の配備完了式典を強行しました。4月17日には宇宙作戦隊や無人機部隊の創設などを盛り込んだ改悪防衛省設置法を成立させました。もっともこれには立憲、社民など野党共同会派までが賛成したのですが。そして、4月21日には民意に反し、完成のメドすらたたない辺野古新基地建設の設計変更を申請しました。極めつきは、憲法に緊急事態条項を組み込もうという盗人猛々しい企ての表明です。さらに当面大きいのは、昨日5月8日に野党欠席の中で審議入りが強行された検察庁法改悪案です。検察までも私物化し、三権分立を破壊する超悪法をまさに「火事場の大泥棒」、「ショック・ドクトリン」そのものの手法で成立させようとしています。私たちの命よりも安倍晋三の政治生命が優先されています。私のツイッター、フェイスブック、ブログにFAXリストがありますので、この週末、衆議院内閣委員会の委員長や与党理事(地元選挙区の与党議員)に抗議のファックスを集中してください。コンビニからでも送れます。
2019年の世界の軍事費は前年比3.6%増の約207兆円に達しました。集計が可能となって以降の最高額を更新する途方もない金額です。日本の2020年度の軍事費も、過去最高の5兆3133億円に膨脹しました。米国製の高額武器の爆買いが止まりません。武器は、使用されて人の命を奪うだけではなく、人々の生存に必要な予算を削ることでも命を奪っています。
その一方で、コロナ危機の中で人命を救う砦である感染病床は、1988年の9060床から、現在は1869床と約5分の1まで減少していました。医療の「効率化」の名のもとで、カネにならない感染症予防を軽視してきたツケが今、表れています。これは世界的な現象でもあるでしょう。
グローバルなコロナ危機は、軍需産業にも影響を及ぼしています。米国の武器調達に3カ月の遅れが生じており、世界最大最悪の「死の商人」である米ロッキード・マーチン社の幹部は、部品の供給網に混乱が生じたため、F35戦闘機が最も大きな打撃を受けていると語っています。
イギリスの巨大軍需企業であるBAEシステムズは、ごく一部とはいえ、感染予防のフェイスシールドの製造を始めており、世界最大級の武器見本市「DSEI」の会場となったロンドンの展示場は、医療施設となっていることが報じられています。昨年11月に「DSEI Japan」が開催された千葉県有施設である幕張メッセも、自民党県議団の要望を受けて、医療施設として活用されようとしています。幕張メッセを、来年5月19日からの再開催が予告されている「DSEI Japan」に貸し出さないよう、本契約が可能となる5月19日までに千葉県に声を集中する必要があります。お配りした森田知事あてのハガキをぜひ届けてください。
さらに、韓国政府は、コロナの感染拡大に伴う緊急災害支援金の財源確保のために、国防費を日本円で約795億円削減することを閣議決定しました。F35やイージス艦の戦闘システムの購入費などの支払いを来年に延ばすというものです。これに対して、小野寺五典元防衛大臣は、「ウォン安で今年支払うと高いから」などと難クセをつけていましたが、こうした常識的な対応すらできない日本政府のあり方を恥じるべきではないでしょうか。
そして、韓国の市民社会からも、大胆な軍縮提案が打ち出されています。有名な政策提言NGOである「参与連帯」が、国防費のうち攻撃用の武器予算を大幅削減し、コロナ対策に回せと要求しています。「新型コロナの世界的な拡散は、安保とは何かを問うている」として、「私たちに重要なことは、既に溢れかえる最先端の武器よりも、良い雇用、しっかりとした社会安全網、持続可能な環境といったものだ」と主張しています。
日本でも同じことを言わなければいけません。私たちNAJATもフィリピンに防空レーダーを輸出する三菱電機に提出した要請書の中で、「気候危機や災害、感染症や貧困こそが脅威である」と強調しました。米国製などの高額武器の爆買いを通じて、自衛隊の攻撃軍化が進んでいます。お配りした「武器より暮らしを!市民ネット」のアクションシートの裏面にもありますが、このままでは、日本はなんと147機分の総経費6.7兆円を投じて世界第2位のF35戦闘機保有国に成り上がり、航空自衛隊の戦闘機すべてが敵基地攻撃能力を持つ「戦闘攻撃機」に変貌し、輸入や開発、射程の延伸により、8種類もの長距離ミサイル保有国となります。そして、今や朝日新聞GLOBEが、村野将(まさし)という米国の軍事シンクタンク研究員の「中国の中距離ミサイルに備えて日米は攻撃力を増強せよ」というインタビューを掲載する時代になっています。これで「専守防衛」など笑止千万、憲法9条は無きものに等しい状態になるでしょう。
私は、第二次補正予算の編成にあたって、2020年度予算中のF35A戦闘機3機 281億円、F35B6機 793億円、長距離巡航ミサイルJSM 136億円、イージス・アショア 129億円の計1339億円を全国のPCR検査センターの整備費に回せと要求したいと思います。
コロナによって「新しい生活様式」や「新しい日常」という言葉が語られ、コロナ後の世界は変わらざるを得ないとも言われています。しかし私は、このままでは弱肉強食により淘汰されながら、旧来の秩序・システムへと回収されかねないと危惧します。コロナ危機で最も過酷な状況に追い込まれている人々、例えば、路上生活者やネットカフェ住民、DV被害者やシングルマザー、非正規労働者、そして学生、医療従事者などは、それ以前から極めて脆弱な立場にありました。今までのあり方自体が問題だったのではないでしょうか。
月30万円をよこせ、休業補償をただちに行え、と今強く要求すべきことはもちろんです。それに加えて私たちは、8月末に提案される2021年度予算案の概算要求において、こうした人々への手当てがしっかりとなされているかを、厳しく監視しなければならないと思います。予算のあり方を根本的に見直し、人々の生存権を重視する「新しい政治様式」こそを編み出さなければならないと思います。
今、経済活動や人の移動に強烈なブレーキがかかり、起きるはずはないと思っていたことが現実になっています。その中で私たちは、困窮を強いられ、萎縮させられ、想像力や構想力を失いかねない状況に追い込まれています。でも、それらに抗いながら、いままで不可能と思われていたことを現実にするための努力を始める時が来ていると思います。
例えば、軍事費を医療費や社会保障費に振り向けること、軍需産業を平和産業へと転換すること。今問われているのは、いつか飛んでくるかもしれないミサイルに備えるふりをするよりも、目の前で苦しむ人を助けることを優先するという、当たり前の倫理を回復させることではないでしょうか。
私たちの「自由と生存」を尊重せよ、ただし、軍産複合体の「自由と生存」には終止符を。知恵と力を合わせて、厳しい時代をたくましく生き延びていきましょう。ありがとうございました。