【報告】伊藤忠アビエーションは憲法違反の長距離巡航ミサイルJSMの輸入をやめろ!3.9本社前抗議 |
3月9日正午過ぎ、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)の呼びかけで、溜池山王駅そばのビルに入る伊藤忠アビエーション株式会社に対する抗議行動を行いました。13人の市民が参加。横断幕やプラカードなどを掲げて、チラシを配布。マイクでオフィス街を歩く人々に訴えました。
13時からは同社内の応接室で代表4人が、小島経営企画部長、冨田同部情報・総務チーム長と約50分間の面談し、NAJATの要請書と名古屋の「不戦へのネットワーク」「東海民衆センター」からの要請書を提出。さらにNAJATが用意した公開質問状も手渡し、後日の文書回答を求めました。
しかし、同社側は「当社の規定により」として公開質問状への文書回答を拒否。拒否するか否かの基準も示せないとしました。結局、こちらの粘りに「文書回答できるかどうかを3月16日に連絡する」と返答。
さらに、「JSMが憲法9条に基づく『専守防衛』原則を逸脱する武器であることをどう認識しているか」との問いには、「防衛省・自衛隊からの要望に基づいて国内法で輸入が認められたものに限って業務を行っている」「民間企業として法的解釈を説明する立場にない」と繰り返しました。「JSMはやがてF35に搭載される。それが近隣国への攻撃に使用され、民間人が殺傷される戦争犯罪が引き起こされる可能性がある。企業としての責任をどう考えるか」との問いには、「個別の装備品の運用方法についての判断は一企業としてはできない」と思考停止。要するに、「売った武器がどう使われようが知ったことではない」との態度を貫きました。
一方で「全体のポリシーは国民の生命・財産を守ること」と主張。これには市民が「他国の人々の命が奪われても構わないのか」「国内法を守るというが、国際人道法は無視するのか」と反論。また、「市民がJSMを憲法違反だと裁判に訴え、違憲判決が出る可能性もある」「CO2排出企業や核兵器製造企業への融資を行わない動きが広がっており、憲法違反や戦争犯罪に関わる企業にも波及する可能性もある。そうしたリスクを背負う覚悟があるのか」とも追及。伊藤忠側は「ご指摘は真摯に受け止める」と返答しました。
全体を通して、国策に追随し、自立した判断を放棄した姿勢が際立っていました。ちなみに、最後に尋ねた笠川信之取締役社長のホームページでの社長メッセージ「攻撃は最善の防御なり」については、2016年のホームページ公開以来掲載しているとして、「営業の際に自ら出向いてアグレッシブにやるべき」との趣旨だと弁明していました。
今回の長距離巡航ミサイルの導入という問題は、メディアの報道も少なく、その重大性がほとんど伝わっていません。JSMの実際の配備は2021年度以降とされており、時間はまだあります。伊藤忠アビエーションは「死の商社」になるべきではありません。この日の取り組みをステップにしぶとく反対の声をあげていきたいと思います。
※以下は、同社に提出した武器取引反対ネットワーク(NAJAT)の要請書と回答を拒否されている公開質問状です。この日、同時刻に名古屋支社への抗議行動も取り組まれました。
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【要請書】
伊藤忠アビエーション株式会社
笠川信之 取締役社長様
憲法違反の長距離巡航ミサイル「JSM」の輸入からただちに手を引いてください
現在、衆議院を通過し参議院で審議中の2020年度防衛予算案に、ノルウェー・コングスベルク社製の長距離巡航ミサイル「JSM」(射程500km)の購入費136億円が計上されています。2018年度、2019年度に続き今回が最後の予算計上となり、計237億円もの血税が投入されます。
JSMは、2016年の「国際航空宇宙展」で展示されていました。安倍政権は、2017年12月に突如として、JSMと、同じく長距離巡航ミサイルである米ロッキード・マーチン社製の「JASSM-ER」「LRASM」(射程約900km)の導入を決めました。政府は「敵の射程外から攻撃するため」の「スタンドオフミサイル」だとして保有を正当化していますが、事実上の敵基地攻撃兵器に他なりません。長距離巡航ミサイルは「離島奪還」などの上陸作戦にはそもそも向いておらず、「島しょ防衛での対地攻撃用」との口実は真っ赤なウソです。
JSMは、政府が105機もの大量購入を決めたF35Aステルス戦闘機に搭載され、対地攻撃を担うことになります。それが、憲法9条の理念に基づく「専守防衛」原則を真っ向から踏みにじることは明らかです。その意味でJSMは憲法違反の武器なのです。
だからこそ、そのJSMの輸入代理店となっている伊藤忠アビエーションの責任が厳しく問われています。驚いたのは貴社のホームページにおいて、笠川信之取締役社長がなんと「攻撃は最善の防御なり。」とのメッセージを発していることです。もはや「専守防衛」を原則とする国の武器貿易商社としての自制は投げ棄てられています。これは2018年2月14日の衆議院予算委員会において安倍首相が表明した「先に攻撃した方が圧倒的に有利になっている」との暴言とも符合します。安倍政権による憲法の蹂躙に追随し、憲法違反の武器輸入で公然と儲けようとする貴社には、「死の商社」との称号がふさわしいのではないでしょうか。
「専守防衛」を担保してきたのは能力を制限することでした。その歯止めが失われてしまえば、軍拡を抑える機能は失われ、時の政権の意志しだいで、容易に先制攻撃すら可能となるでしょう。そして、日本が先制攻撃能力を持つことは、東アジアの軍拡競争をさらに加速させ、地域に暮らす人々の安全をむしろ脅かすことにつながります。
政府が過ちを犯そうとするとき、市民や企業こそが倫理の力によってブレーキをかけるべきです。貴社の姿勢はそれに逆行し、自社のブランドイメージをも毀損する最悪の選択です。
幸い、長距離巡航ミサイルの導入はまだ始まったばかりです。JSMの配備は2021年度以降になると言われています。まだ間に合います。私たちは貴社が憲法違反のJSMの輸入からただちに手を引くことを求めます。そのことは、ほとんど知られていない敵基地攻撃兵器の導入問題を広く知らしめるとともに、安倍政権による9条壊憲先取りの動きへの大きなブレーキとなるでしょう。憲法違反と戦争加担の道からひき返すことを強く要求します。
2020年3月9日 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
東京都新宿区下宮比町3-12 明成ビル302 3.11市民プラザ気付
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【公開質問状】
伊藤忠アビエーション株式会社
笠川信之取締役社長様
1.長距離巡航ミサイル「JSM」の日本への輸入業務を開始したのはいつでしょうか。
2.輸入業務の今までの経緯と現段階、そして配備までの見通しや手続きの流れについて、可能な範囲でお示しください。
3.JSMの輸入業務によって貴社が得ることになる利益はおおよそどのくらいになるのでしょうか。
4.JSMは憲法9条の理念に基づく「専守防衛」原則を明らかに逸脱する敵基地攻撃兵器だと考えますが、貴社の認識はいかがでしょうか。
5.将来、JSMが敵基地攻撃、先制攻撃に使用され、民間人の殺傷や民間施設の破壊などの戦争犯罪を引き起こしたとき、貴社はどのように責任をとるおつもりがありますか。
6.笠川信之取締役社長のホームページでのメッセージ「攻撃は最善の防御なり。」はいつから掲載されていますか。また、「専守防衛」を掲げる日本の武器貿易商社としてふさわしくないと考えますが、いかがでしょうか。
2020年3月9日 武器取引反対ネットワーク(NAJAT)
東京都新宿区下宮比町3-12 明成ビル302 3.11市民プラザ気付