【紹介】パンフ『宇宙に拡がる南西諸島の軍備強化』(前田佐和子さん講演録) |
前田佐和子さん講演録パンフレット
『宇宙に拡がる南西諸島の軍備強化』
(発行:大軍拡と基地強化にNO!アクション2019)
杉原浩司(武器取引反対ネットワーク[NAJAT]代表)
いま、知る人ぞ知るあるパンフレットがじわじわと売れ行きを伸ばしています。既に3刷が決定し、計1500部になろうとしています。南西諸島の地元住民からの注文も相次ぎ、大好評です。
首都圏の反基地運動や私たちNAJATなどでつくる「大軍拡と基地強化にNO!アクション」が昨年7月6日に開催した発足集会での前田佐和子さん(元京都女子大教授)の講演をもとに、最新情報を盛り込んでまとめたものです。
前田さんは自衛隊基地の建設が強行されている宮古島や石垣島などの現地に足を運び、調査や住民との交流をされてきました。前半では、それぞれの島で進む軍事基地建設の状況と人々の闘いをていねいに伝えています。写真や図表も豊富に掲載されています。
そして、中盤から後半にかけてがこの冊子の真骨頂と言えるでしょう。宇宙科学を専門とされてきた前田さんは、南西諸島の軍事化の肝が、宇宙システムにこそ存在することを暴き出します。なぜ、石垣、宮古、久米島、種子島に準天頂衛星(日本版GPS)の地上管制局が集中的に設置されているのか。その疑問を解明する中から、南西諸島こそが現代の「ポスト・ミサイル戦争」の最前線とされていることを論証していきます。
要するに準天頂衛星は、「島しょ防衛」を名目に開発されている「高速滑空弾」や「極超音速ミサイル」などの長距離ミサイルを実戦で誘導する際に不可欠な重要インフラなのです。しかも、「専守防衛」を踏みにじる”違憲兵器”である極超音速ミサイルの開発に、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や岡山大学、東海大学までもが参加しているのです。
「軍民混在の島しょ防衛戦」をシナリオとする自衛隊の戦略は、まさに「沖縄戦の再来」であり、危険な弾薬庫やミサイル部隊を住宅地の傍らに張り付けることは、人々の暮らしや尊厳を蹂躙することに他なりません。
「島しょ防衛」が新防衛大綱に基づく大軍拡路線の要に据えられ、武器導入や開発の口実とされている中、地元住民はまだまだ孤立した闘いを強いられています。このパンフは、宇宙軍拡との密接なつながりを解き明かすことを通して、南西諸島の軍事化を阻むことが自衛隊の「攻撃軍」化を食い止めることに直結していることをわかりやすく伝えています。
2月25日の毎日新聞は「滑空弾 対空母も検討」と見出しを打って、開発中の高速滑空弾に、防衛装備庁が研究を進めている「先進対艦・対地弾頭」を組み込む検討をしていると報じました。空母の甲板を貫き、数百メートル四方の範囲にある目標を破壊することも可能になるというのです。これは、まさしく前田さんが終盤で注意を喚起された部分と重なります。
南西諸島を軍拡ではなく「軍縮の最前線」へと反転させていくために、タイムリーなこの冊子を多くの人々に読んでいただき、広めてほしいと思います。
(初出「ピープルズ・プラン研究所Newsletter」68号)
<参考>
離島防衛用「高速滑空弾」 対空母も検討 防衛省、速度や射程向上へ(2月25日、毎日)
https://mainichi.jp/articles/20200224/k00/00m/010/219000c
★1冊300円、送料実費負担。
申し込みは anti.arms.export@gmail.com または 090-6185-4407(杉原)まで。お名前、冊数、送付先、電話番号をご連絡ください。
【目次】
・「共存」への不安~与那国島
・生活圏に侵入する自衛隊~奄美大島
・水汚染と弾薬庫の危険~宮古島
・誘致派市長との攻防~石垣島
・水陸機動団と島嶼防衛戦争
・軍民混在の島嶼防衛戦
・ミサイル誘導の仕組み
・準天頂衛星は測位衛星
・主導したのは財界
・「宇宙安全保障」への急傾斜
・宇宙デブリと衛星破壊実験
・集中する追跡管制局
・南西諸島上空の電離圏異常
・暗号化信号を部隊運用に利用する
・「ポスト・ミサイル戦争」としての島嶼防衛戦争
・クラスター爆弾に代わる極超音速滑空飛翔体
・新宇宙戦争の技術開発へ
・謝辞
・奄美大島の現地より(佐竹京子さん)