東京新聞に「敵基地攻撃兵器の導入に反対する緊急院内集会」が掲載 |
---------------------------------
敵基地攻撃兵器 導入へ 薄れゆく専守防衛
市民ら危機感 緊急集会
既成事実積み上げ 9条空洞化狙う?
(2018年3月7日、東京新聞「こちら特報部」、片山夏子記者)
(前文は略)
当初予算案はすでに衆院を通過している。政府が導入するのは、F35戦闘機に搭載予定の対地・対艦攻撃用の「JSM」(射程500㌔)など米国とノルウェー製の三種の長距離巡航ミサイルで、購入などに約22億円を計上している。
さらに島しょ防衛用の国産ミサイル「高速滑空弾」の研究費46億円や、「新対艦誘導弾」の射程を延長する研究費として54億円が計上された。
6日に緊急集会を開いた武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)代表の杉原浩司さんは「高速滑空弾など国産ミサイルの研究は、04年に敵基地攻撃につながると断念した長射程精密誘導弾の研究を始めるに等しい。さらに他国の長距離巡航ミサイルを購入することで『専守防衛』を大きく逸脱しつつある」と説明。
杉原さんは「事実上の改憲がまかり通り、日本は武器をここまでしかもてないという枠組みが崩壊した」と、危機感を募らせた。
戦後日本の防衛の基本原則である「専守防衛」が崩れつつあるのは、ミサイルの導入のみではない。
安倍首相は2日の参院予算委員会で、海上自衛隊の護衛艦「いずも」の空母化の検討をめぐり「(防衛能力の)拡張性についてさまざまな検討を行うことは当然だ。危機が生じてからでは泥縄式になってしまう」と強調。先月14日の衆院予算委員会では「防衛戦略として考えれば(専守防衛)は大変厳しい。相手の第一撃を甘受し、国土が戦場になりかねないものだ。先に攻撃した方が圧倒的に有利だ」と、「おきて破り」への欲求を隠さなかった。
この前のめりな姿勢は憲法九条の改憲と一体だ。
NPO法人「ピースデポ」特別顧問の梅林宏道さんは、これまで「空母を持たないことは、敵基地攻撃能力を持たない専守防衛の定義のようなものだった」と解説する。現在の日本の向かう方向は「他国から見ると専守防衛を放棄し、より攻撃的な国家に変質しようということにしかならない。ますます九条は空洞化し、あってもなきがごとくになる」と危ぶむ。
「日本が北朝鮮や中国などから軍事的な脅威にさらされていると強調され、政府が軍備増強が必要だと強調し、国民がならされていくという流れが強まっている。国民は政府の意図を見抜かなくてはならない」
6日の集会では、学習院大法科大学院の青井未帆教授(憲法)が講演。青井教授は、14年の集団的自衛権行使の容認後、政府は国民に「仕方がない」と思わせ、既成事実を積み重ねてきたと強調。そのうえで「自衛のためという意味が変わってきている。日本は平和主義を高く掲げる憲法の下で造られてきた平和国家だったはずが、現状では他国から見れば、平和国家というのはしらじらしいのではないか」と指弾した。
青井教授は日本の安全保障を考える際、日本が他国の目からどう映っているかという視点が不可欠だと指摘。「いまの日本は内向きなことばかり言っている。自衛のためという口実で、専守防衛の枠を超えてしまってはならない。改憲を狙った既成事実の積み上げをいまこそ止めなくてはならない」と訴えた。