【資料】講演レジュメ~「先取り壊憲」としての大軍拡をどう止めるか |
「死の商人」=”軍産学複合体”の罠にはまる日本 ~「先取り壊憲」としての大軍拡をどう止めるか
杉原浩司 武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)代表
1. 世界の武器輸出はどうなっているか
・「北朝鮮特需」に沸き立つ米軍需産業。国防予算の急増、株価上昇と増産、新規採用の増加
・トランプ政権がさらに露骨な武器輸出へ
来日時に前代未聞の「武器買え」会見。呼応する安倍首相
2月初旬にも武器輸出規制を緩和し、海外駐在の米武官や外交官を武器セールスに動員する「国家安全保障決定令(NSDD)」に署名へ。「オバマの武器バザール」(ウィリアム・D・ハートゥング『ロッキード・マーティン』著者)よりもさらに!
※小型核、海洋発射型核巡航ミサイルの開発などの「核戦略見直し」(NPR)公表へ
・ロシアなどは敵対する2カ国に武器輸出
2017年10月5日、ロシアはサウジアラビアと防空用の最新鋭地対空ミサイル「S400」の売却で合意。2016年10月にはイランに「S300」を輸出
※8月に日本で「武器貿易条約(ATT)第4回締約国会議」が開催
2. FMS(有償軍事援助)の増大と武器輸出促進の矛盾
・米国「軍産複合体」による”ぼったくりビジネス”=「属国貿易」としてのFMSの急増。第2次安倍政権以降の5年でそれまでの約4.5倍に膨張
・「ミサイル防衛」、グローバルホーク、F35戦闘機、オスプレイ、新早期警戒機E2Dなど
・日本経団連の内部資料「防衛生産・技術基盤の維持・強化を求める(案)」(2017年9月19日)
近年、戦闘機の国内生産・開発が止まっているのを問題視し、「可能な限りわが国主導での開発・調達計画を進めることが重要」と主張。武器輸出解禁を評価しつつ、「官民一体の推進体制の構築」や「情報開示にかかる規制の緩和」など武器輸出の更なる推進を要求(『週刊朝日』12月29日号)
・三菱重工の国策会社化(本体に残るのは防衛、航空・宇宙、原子力のみに)
3. イージス・アショアなど「ミサイル防衛」の拡充
・2兆円の血税を吸い込んだブラックホール
・「ミサイル防衛」自体への根本的な批判が必要
「報復行動から自国を遮断することによって(といってもそれは、限られた範囲において)、ミサイル防衛は、どこか国外の特定地域の情勢を”形成する”能力と意志を米国に保証する」(アンドリュー・バセビッチ)
「ミサイル防衛というシステムは、先制攻撃すると反撃されるという恐れから米国を解き放ち、米軍が安心して先制攻撃を行える態勢をつくることに眼目」(宇宙の軍事化と核戦場化に反対する地球ネットワーク http://space4peace.org )
「BMDが引き起こす目に見えない危険の一つは、それが『幻の安心感』を生み出して政治家の判断を誤らせ得ることにある」
(高榎堯、『世界』2000年3月号)
・「ミサイル防衛」=「先制攻撃促進装置」「攻撃力増強装置」「軍拡競争推進装置」
・イージス・アショアはグアム、ハワイなど米国向けミサイルの迎撃が主目的。米国のための「盾」に
・強力な電磁波の危険=Xバンドレーダーによる飛行禁止区域の影響でドクターヘリ運航に支障
・巡航ミサイル防衛を含む「IAMD(統合防空・ミサイル防衛)」構想の名のもとに、際限なき血税浪費へ。軍産複合体にとっての「金の成る木」、日本は「金の成る国」
・秋田、山口、京丹後など地元の人々との連携を
4. 敵基地攻撃兵器の導入という「壊憲」
・「日本版トマホーク」の研究費のみならず、3種類の長射程巡航ミサイルの購入費を突然計上
・「敵基地反撃能力の保有を」と提言した張本人である小野寺防衛相が、「専守防衛は変わらない」「敵基地攻撃兵器ではない」と強弁する厚顔無恥
・米巨大軍需企業の担当者「こんなにも急に敵基地攻撃兵器の保有に踏み切るとは」(望月衣塑子さん談)
・憲法9条の規範力の最終的解体。「専守防衛」の崩壊=実質改憲=「先取り壊憲」!
・「攻撃的兵器不保持の原則が維持できない場合、戦力統制という9条2項の持つ意義は消失し、際限のない軍拡が可能となる」
(木下昌彦・神戸大准教授、2014年5月15日、朝日)
・「軍事力=能力×意志」。意志を縛ることは不可能だから能力を縛ってきた。「戦力統制」の放棄へ
・「軍事的合理性」を憲法の上に置く=憲法9条の無力化であり、立憲主義の破壊そのもの
・「安保法制」と連動し、日米共同軍事作戦態勢の強化に。南西諸島の軍事化にも直結
※F35Bを宮古、石垣、与那国島、南・北大東島の各空港でも使用検討
準天頂衛星「みちびき」の追跡管制局が種子島、久米島、宮古島、石垣島に。ミサイルをGPS誘導へ(前田佐和子『アジェンダ』59号)
・導入反対派を「パブロフの犬」と罵倒する織田邦男元空将。元「軍人」がのさばる危険な言論状況
・「(敵基地攻撃して)『民間人を誤爆したらどうするの?』とメディアは問うべき」(伊勢崎賢治さん)
・かつて研究費の計上を阻止した公明党は、防衛省による屁理屈に追従する堕落ぶり
・立憲民主党など野党がしっかり闘うこと ※枝野代表の代表質問は踏み込み不足
・通常国会で市民と立憲野党は「導入や検討作業を直ちに中止しろ」と主張し、徹底抗戦すべき
・外堀も内堀も埋められ、憲法9条をなくすことに限りなく等しい。明文改憲阻止(発議させない)の取り組みの中に、敵基地攻撃兵器の導入阻止を明確に位置付けることが不可欠
・弱点は公明党と小野寺防衛相。「相手国の壊滅的破壊のみに用いられる攻撃的兵器」(小野寺)とは何か?など、徹底追及を
・「立憲的改憲」ではなく、「立憲主義の貫徹」「憲法の実現」を
5. 新大綱・中期防、国家安保戦略の改定に対抗する軍縮ビジョン・ロードマップを
・空母や電子攻撃機の保有を含む「壊憲」攻撃に守りの姿勢だけでは弱い。明確な対抗ビジョンが必要
・「米国は矛、日本は盾」でいいのか? 「専守防衛」と「非核三原則」の欺瞞
「日韓は米国の『核の傘』の下で事実上、核武装している」(2009年7月24日、朝鮮民主主義人民共和国・国連代表部声明)
→ 米国の矛(通常戦力)の縮小+「核の傘」をたたむ(核兵器禁止条約、北東アジア非核地帯)
※横須賀基地の11隻の米イージス艦には各々100発近いトマホーク巡航ミサイルの発射管。一部は24時間発射態勢に。いざとなれば1000発ものミサイルで北朝鮮や中国にピンポイント攻撃が可能(梅林宏道『在日米軍』岩波新書)
※強襲揚陸艦「ワスプ」の佐世保配備
・「対抗するために自らが相手と同じ怪物になってはいけない」(石川健治)→既に巨大な怪物そのもの
・「ミサイル防衛」への批判は「矛と盾」の役割分担自体の問い直しに直結している
・朝鮮半島「危機」にどう向き合うか?
→「朝鮮戦争を終わらせる=休戦協定を平和協定に」を柱とする強力な反戦、脱冷戦、終戦運動を
※7月27日で休戦協定65年。東アジア冷戦が朝鮮半島や沖縄などの民衆に強いた人権侵害の過酷さ
・モートン・ハルペリンら米国の有力な識者からの提言「包括的安保合意で核の脅威を終わらせる」
・NSC(国家安全保障会議)による戦争シュミレーション策定の中止を
・ミサイル避難訓練の中止を
・日本から米国などの「軍産複合体」を叩き出すこと
・「日米合同委員会」による支配を終わらせる ※『朝鮮戦争は、なぜ終わらないのか』(五味洋治、創元社)は必読
・今こそ「軍事費削って暮らしに回せ!」の声を
・東アジアの安全保障をどうするのか。年末までにまとめられる新大綱・新国家安保戦略に、骨太で説得力のある対抗ビジョンを
・日米平和友好条約と「良心的兵役(軍事)拒否国家」という将来モデルを
・米軍基地をなくして「人道支援基地」「災害救援基地」に ※NHK BSスペシャル「命の巨大倉庫」
終わりに
「長かったミサイル冷戦が残した貴重な教訓の一つは、逆説的に聞こえるかもしれないが、『相手を脅すことではなく相手に安心感を与えることが自国の安全を高める』というものだった」(高榎堯、『世界』2000年3月「『弾道ミサイル防衛』は愚行である」)
「20世紀のあいだに、武器取引は2億3100万人もの命を奪った紛争を実行可能にし、それを焚きつけてきた。21世紀の最初の10年は、それにもまして暴力的だった」
「普遍的な人権と平等と公正への基本的な責任、殺人兵器をまた作って人の命を奪うよりも、空腹な胃袋を満たすことで命を救うほうがいいという信念。それは、この取引が、人類史上屈指の破壊的で腐敗した取引が、いまのまま、ほとんど無秩序で、精査されていない状態でつづいていくのを許してはならないと要求している」(アンドルー・ファインスタイン、『武器ビジネス』原書房)