集団的自衛権問題研究会 News&Review:特別版 第19号(強行採決抗議声明) |
【集団的自衛権問題研究会 News&Review :特別版 第19号】 [転送・転載歓迎]
(2015年7月17日)
このたびの安保関連法制の衆議院強行採決にあたり、集団的自衛権問題研究会では、代表川崎哲による声明を発表しました。ぜひご一読ください。後半に関連企画のご案内もあります。
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【声明】
-衆院強行採決-
民主主義を脅かす独善政治を批判する
http://www.sjmk.org/?page_id=325
2015年7月16日
集団的自衛権問題研究会 代表 川崎哲
安保関連法案が本日、与党の強行採決によって衆議院を通過した。戦後日本の安保政策を大転換させるこの法案には、憲法学者らが憲法違反だと批判し、国民の過半数が反対してきた。国民の大多数が説明不足だと感じているなかでこのような強引な手法がとられたことに、強い憤りを禁じ得ない。
この安保法制は、憲法論、手続き論から政策論に至るまで、多面にわたり深刻な問題をはらんでいる。しかし最大の問題は、政策論以前に、憲法違反が指摘されている法案を強引に押し通すという政治手法である。そこにみられる為政者の思想じたいに、この法案の危険性が如実に示されている。
振り返れば昨年7月の閣議決定にあたって政府・与党は、「政府が勝手に憲法解釈を変えるのか」という国内外の批判に対し、「関連法制を国会で審議するから民主的プロセスは担保されている」と抗弁していた。しかるに国会審議が始まると、2カ月も経たないうちに、「国民の理解は進んでいない」と安倍首相自らが認める状況であるにもかかわらず、採決を強行した。憲法学者の批判に対して与党政治家は「学者の言う通りにしたら平和が保たれたか」と言い放った。首相は「国民の命と幸せな生活を守り抜いていく」のが「私たちの使命」だという論法で、国民の合意なき強行採決を正当化した。
ここにみられるのは、政府と与党指導部のなかに蔓延し増長する独善主義である。国民の懸念やメディアの批判や学者の反論を最終的には無視してでも、国を治める政府・与党が全権委任を受けることができるという意識がそこにある。これは、民主主義の根幹を脅かすものである。
今回の法制の重要な論点の一つが、まさに「民主的統制」であった。非常時において国家権力や軍事力が暴走しないために民主的統制を機能させなければいけないというのが、戦後日本の出発点だったはずである。法制を推進する政府・与党は、「限定行使」であり「歯止め」が効くと強弁している。しかし、今回の衆議院での強引な手法は、法案が成立した場合の実際の運用において、「国会承認」や「統制」がいかに軽視されるかを予見させるものだ。
衆議院での審議においては、集団的自衛権の発動が認められるとする「存立危機事態」がどのような基準で認定されるのかがくり返し論じられた。しかし政府の説明はきわめて曖昧であり、ここでも「ときの政府への一任」という性格を色濃く示していたのである。
衆議院での審議は、従来の憲法解釈との整合性や集団的自衛権の発動要件などに議論が集中したため、政策論上の妥当性についてはまだほとんど論じられていない。安全保障政策としては、自衛隊が抱える現実の危険、本当に武力紛争抑止の効果を持つのか、地域的な緊張やテロの危険をむしろ高めるのではないかといった点について十分に検討されていない。外交政策としては、周辺諸国との外交関係への影響が冷静に論じられているとは言い難い。さらに国内的には、これらの法制が実際に運用されるにあたっての自治体への影響、国民生活における制限などについては議題にすら上がっていない状況である。
米議会に「夏までに成立させる」と約束してしまったから国会審議を急ぐというのでは、国民不在も甚だしい。参議院では上述の諸点に関する徹底的な議論が求められるのはもちろんであるが、何よりも、政府・与党がこのような独善的で一方的な手法を撤回し、信頼回復につとめることが第一に求められる。「今国会での成立ありき」の手法はとうてい認められない。
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※来る7月22日(水)午後7時から、東京・高田馬場のピースボートにて、
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http://peaceboat.org/8545.html
講師は当研究会代表でもある川崎哲です。
「徹底解説 安保法制と集団的自衛権」
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予約方法 http://peaceboat.org/8545.html またはお電話にて 03-3363-7561(10:00~19:00)
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<特別版 第18号(7月15日の締め括り総括質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=321
<特別版 第17号(7月13日の中央公聴会録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=316
<特別版 第16号(7月10日の集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=311
<特別版 第15号(7月8日の一般質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=308
<特別版 第14号(7月6日の埼玉参考人会質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=304
<特別版 第13号(7月3日の集中質疑録はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=297
<特別質疑版 第12号(維新独自案発表と研究会声明)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=290
<【声明】[維新独自案]法案の修正ではなく、閣議決定の見直しを>
http://www.sjmk.org/?page_id=283
<特別版 第11号(7月1日の参考人質疑・一般質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=278
<維新「独自案」に関わる3つの論点>
6月29日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=265
<特別版 第10号(6月29日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=275
<特別版 第9号(6月26日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=255
<特別版 第8号(6月22日の参考人質疑録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=251
<特別版 第7号(6月19日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=247
<特別版 第6号(6月15日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=241
<特別版 第5号(6月12日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=239
<2つの政府見解に関するコメント>
6月10日 川崎哲(集団的自衛権問題研究会代表)
http://www.sjmk.org/?page_id=217
<特別版 第4号(6月10日の審議録など)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=226
<特別版 第3号(政府見解等を掲載)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=207
<特別版 第2号(6月5日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=187
<特別版 第1号(6月1日の審議録)はこちら>
http://www.sjmk.org/?page_id=136
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発行:集団的自衛権問題研究会
代表・発行人:川崎哲
News&Review特別版 編集長:杉原浩司
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◆発売中の『世界』8月号に当研究会の論考が掲載されています。
ぜひご一読ください。
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◇『世界』7月号、6月号にも論考が掲載されました。
http://www.sjmk.org/?p=194
http://www.sjmk.org/?p=118